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【海外赴任中に退職した方向け】海外移住後の退職金の税金還付

 

最近、海外赴任中に退職し、現地で転職する方が増えています。その結果、現地で受け取った退職金に対して多額の税金が引かれているというご相談が寄せられています。「還付できますか?」というご質問の回答として、今回は非居住者の退職金にかかる税金の還付方法についてご説明します。

 

 

海外赴任中/赴任後に海外移住する場合の退職金にかかる税金還付方法

海外で退職金を受領した場合、退職金のうち日本国内の勤務期間に対応する部分が含まれているときは、源泉徴収の対象となります。

日本に住んでいる日本の居住者が退職金を受け取る場合は、退職所得控除や2分の1課税などの優遇措置が適用されます。一方、非居住者が受け取る退職金には通常の優遇措置が適用されず、退職金のうち国内勤務期間に対応する金額の20.42%の源泉徴収が行われます。

結果として、非居住者に支払われる退職金に対する源泉徴収は、居住者の場合と比べて源泉徴収税額が過大になるケースが少なくありません。源泉徴収税額が過大になっている場合には、救済措置として、退職金受領時に居住者だったとみなして所得税の計算を行い、有利な方を選択する退職所得の選択課税の申告を行うことで還付金を受け取ることができます(所得税法171条)。

なお、退職所得の発生日は退職日です。居住者になった後に実際に支給されたとしても、退職日の時点で非居住者であれば、非居住者として源泉徴収が行われます。

 

具体例

アメリカに赴任中に退職して日本に帰国せずにそのまま現地で転職しました。
退職金は600万円、勤務期間15年のうち最後の5年間が海外勤務でした。

計算方法

①源泉徴収税

600万円×5年/15年×20.42%=408,400円

非居住者に対して支払われる退職金は、居住者であった期間に行った勤務の部分について、国内源泉所得相当額として支払時に20.42%の源泉徴収がされます。

②退職所得の選択課税を適用した場合

退職所得控除額=40万円×勤続年数15年=600万円
退職所得=0円

この場合、源泉徴収税額408,400円全額が還付されることになります。

 

 

留意点

退職金を以前に受給したことがある場合や、役員である場合等は計算方法や計算結果が異なる可能性がございます。また、確定拠出年金や確定給付企業年金の一時金の受給等も計算に含めます。

また、退職所得の選択課税の申告を行う際には、納税管理人の設定が必要となり、確定申告書には、非居住者に支払われる給与・報酬、年金及び賞金の支払調書等の明細を添付を忘れないように留意ください。